加藤陽二教授
兵庫県立大学 環境人間学部 加藤陽二教授
先端食科学研究センター 兼任教員
名古屋大学農学博士
2006年頃ニュージーランドのクライストチャーチにあるオタゴ大学で、客員研究員として過ごしていた時に、マヌカハニーに興味を持つ。
高い抗菌作用の秘密はメチルグリオキサール
マヌカハニーの高い抗菌作用は、主にメチルグリオキサールによるものです。
これはマヌカに花蜜に含まれるジヒドロキシアセトンという糖類が、保温・貯蔵中に変換されて生成されます。(アミノカルボニル反応)。
メチルグリオキサールは高い抗菌作用を持ち熱や光にも強いため、体内もその機能性を発揮している可能性があります。
ちなみに、採蜜したマヌカハニーを4か月ほど37℃程度で保管すると、ジヒドロキシアセトンの量が倍増します。多くの養蜂業者はマヌカハニーを倉庫などに保管し、量が増えたところで抗菌性を検査依頼し、製品として出荷しています。
抗菌作用をアピールするための偽装
マヌカハニーは抗菌作用が高いほど消費者にアピールできるため、抗菌性やメチルグリオキサールの含有量を表すため、UMF、MGO、MGSなどの認証表示が使用されますが、先に述べたように、加温によってメチルグリオキサールを生成するアミノカルボニル反応が促進され、業者によっては販売価格に影響するため量を増加させる目的で、マヌカハニーを過度に加熱処理している可能性もあります。
高い抗菌作用を持つ商品は消費者にとってメリットですが、この成分は反応性が高いため、消費者に届く頃には、抗菌性が減少してしまうこともあります。
実際にマヌカハニーを分析してみると、メチルグリオキサールをはじめレプトスペリン、メチルシリンゲートなどの含有量は商品によってさまざまなため、ニュージーランド政府は認証表示の厳格化を進めています。
マヌカハニーは一般的なはちみつと比べて価格が高いため、業者がリスクを冒してでも偽装することがあります。実際にメチルグリオキサールなどを添加したり抗菌性を偽装したりするケースがあります。
レプトスペリンを発見!
マヌカハニーの歴史はまだ浅く、科学的な研究がまだまだ進んでいないのが現状です。
2008年頃から、加藤陽二教授のラボではマヌカハニーの機能性及びその活性成分を調べる研究に着手しました。
着目したのは炎症性酵素として知られるミエロペルオキシダーゼの阻害活性です。
何種類かのはちみつを調べると、マヌカハニーに最も高い酵素阻害活性が認められました。
実験結果からその要因はマヌカハニーに豊富に含まれるメチルシリンゲートという物質、さらにメチルシリンゲートを基にした新しい物質であることがわかりました。
2010年、加藤陽二教授は、この新しい物質を、レプトスペリン(Leptosperin)と命名しました。
様々なはちみつを調べましたが、レプトスペリンが検出されたのは、マヌカハニー及びマヌカの亜種からとれるはちみつ(Jelly bush honey)だけでした。
ドイツの研究グループも、レプトスペリンをマヌカハニーに特有の成分として報告しています。
レプトスペリンとは
レプトスペリンは、マヌカハニーの抗菌性およびメチルグリオキサール量と高い相関を示しています。そのため、加藤陽二教授はレプトスペリンがマヌカハニーの純度を示す指標として有効だと考えています。
世界中の消費者に高品質なマヌカハニーを安心して届けられるようにニュージーランドとともに協力体制を取りながら研究を進めています。
マヌカハニーの機能性については、まだまだ未知の領域ですが、新たなパワーを探るために、今後も研究を続けていくそうです。